お久しぶりです。Wevery教務課の江草優美です。
今回は、2018年度中学入試で、注目を集めた入試問題についてお話したいと思います。
中学入試(特に私立中学入試)で一番重視される科目は、一般的に「算数」とされています。
理科や社会はほぼ暗記科目とされており、いかに知識を持っているか、という試験になることがほとんどで、
覚えたもの勝ちになりやすいです。(ですので、関西の有名私立である灘中学では、理社の試験がありません。)
また、国語は何となくで考えても出来てしまう、あまり時間をかけて勉強することが少ない、など、
そこまで受験生も重視しませんし、出題者側もあまり凝った問題を出すことはありません。
「算数」といっても小学校の簡単な計算問題や、文章問題でも式が1つや2つで解けるようなものではなく、
私立中学入試(特にレベルの高い中学)の算数は、相当な思考力が必要とされ、
「逆に大人は解けない!」「中学以降の数学の知識を使わない解き方は難しい!」というものばかりです。
レベルが高ければ高いほど、算数ができるかどうかが入試突破の鍵となるケースが多いです。
しかし、2018年度の中学入試で、これに当てはまらないタイプの入試となった学校があります。
関東の男子校御三家の一つに数えられる、開成中学校の入試問題です。
今回の開成中学校の入試問題は、算数が易化し、国語で私立中学には珍しいタイプの問題が出題されました。
その国語の問題は結構話題になり、私もインターネット上で見つけてこれは面白いと思いました。
話題となったのは国語の大問2です。文章と、折れ線グラフと、表があるという問題で、
インターネット上で「カニ弁当問題」と言われている(みたいです)
問題の概要は以下の通り。
とある会社が、ある百貨店で北海道物産展をするので、カニ弁当を仕入れて欲しいと依頼をされた。
新宿支店と池袋支店の2か所で物産展をするにあたり、新宿支店を大西社員が、池袋支店を小池社員が担当をすることになった。
新宿支店の大西社員は500個のカニ弁当を発注し、18時までに完売した。
池袋支店の小池社員は450個のカニ弁当を発注し、20個売れ残った(ここはグラフや表から読み取る)
報告会で販売部長がこのことについてグラフを示して報告した。
その報告から、社長が、販売部長は大西社員を評価していることを報告から指摘し、社長は小池社員を評価する、と言った。
設問は、「販売部長の報告で客観性に欠けていると思われる言葉をぬき出す」「なぜ社長が大西社員ではなく小池社員を評価しているのか、指定された接続語を使って4文で答える」というものです。
(問題そのものは四谷大塚の過去問データベースから見られます)
文章を読み解く読解力、文の流れや接続語などの意味を掴む語彙力、グラフや表を読み解く力、短い文でまとめる表現力など、様々な国語の力が試される問題です。本当に国語の力が無いと解けない問題だと思います。
また、分かる人には分かるのですが、この問題は2020年の教育改革を意識して作られていると思います。
何回かここでも書きましたが、2020年に色々学校の指導も変わりますが、よく知られているのが「センター試験がなくなる」ということでしょう。
センター試験は国立大学を受ける人は必須、私立大学でも点数を利用して入試に使える試験で、全てマーク式(選択式)の試験です。全て選択式であるため、採点はすぐ終えられるものの、本当に受験生の学力を測れるのか、という声も今までありました。
そこで、2020年の入試からはマーク式の問題だけでなく、国語と数学だけですが記述式の問題が増えます。
ここで増える国語の記述式問題は今までの国語の問題(評論や小説を読んで答える問題)ではなく、実用的な契約書などの文書や、表やグラフ・図などが伴ったものになります。
今回の開成中学の問題は、この教育改革に伴う、大学入試改革を意識したものだと思われます。問題の傾向が、この国語の記述式問題と似ているのです。
(大学入試改革で出題される記述式問題については、文部科学省から昨年夏頃に問題のサンプルが出されています)
今までこういった問題は公立中高一貫校に多かったのですが、私立のしかも男子御三家と言われる学校がこのような問題を出題したことで、今後似たような傾向の問題を出題する学校が増えていくと思います。そもそもが、大学入試が変わっていくので、それに対応できるような子どもを入学させるのは当たり前です。
私立中学受験は公立中学受験とは違う問題傾向ですが、今後差がなくなっていく可能性があります。また、「中学受験なんて関係ない!」という人も、大学入試が変わっていくので、無縁ではありません。
高校入試でも、似たような傾向の問題は増えつつあります。
そもそも国語の力は、どの科目にも必須の基本的な力になり、今までの試験形式では完全には測れない力でもあります。
国語だけに限らず、どの科目でも記述式や長文の問題、グラフや表を伴う問題が増えていきます。
是非元の問題を見て頂いて、一度解いてもらえたらと思います。
(小学生がこれを解くのか…と思うと思います…)
どんどん「入試」や「教育」の形が変化していきます。
最新の教育についての情報を発信していくと共に、それにどう対応していったらいいのか、今後の教育に対応した指導などこれからもしていきますので、是非よろしくお願いします!